全国5都市で開催されたJFL（JAPAN FM LEAGUE）5局共同キャンペーン「JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM」。その東京公演が、2015年10月22日、Zepp Tokyoにて行われた。RO69では、この模様をライヴ写真とレポートでお届けする。

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国内のFM局ネットワーク（JFL）による企画で、優れた音楽を次の世代に繋ぐ、という意図のもとに繰り広げられたツアーイヴェント『JFL presents FOR THE NEXT』。アマチュアアーティストによるオーディションも行われ（本公演でオープニングアクトを務めたのはflower in the vasement）、今回のテーマソングとなる“アイノネ”（実に約20年ぶり、2作目のシングル）を提供したYEN TOWN BANDを中心に、5箇所のZeppで豪華対バンライヴが行われた。10月17日のZepp Sapporo公演に続く、10月22日東京公演の模様をレポートしたい。

司会のJ-WAVE・藤田琢己による呼び込みで、この日トップバッターに立つのはamazarashi。紗幕スクリーンの向こう側から、堰を切ったように溢れ出すロックサウンドと、秋田ひろむ（Vo・G）の昂ったラップ調ヴォーカルで“後期衝動”が繰り出される。「Zepp Tokyo!! 青森から来ました、amazarashiです！」と挨拶を投げかける彼の声のトーンには自信が漲るようだ。“季節は次々死んでいく”では、漢語に翻訳された歌詞のタイポグラフィーがスクリーン上からインパクトをもたらし、ダイナミックに激情を描き出す“空っぽの空に潰される”へと連なってゆく。柔らかくサイケデリックな映像と共に、自伝的に届けられる『スピードと摩擦』のカップリング曲“名前”も、歌詞の一言一句が突き刺さる。そして、トーチが揺らめく中での“カルマ”は、ハイクオリティかつ衝撃的なCGアニメーションに負けず劣らず、浴びせかけるような歌詞が最もエモーショナルなメロディと化してゆく。僅か5曲とはいえ、「これがamazarashiだ」、という濃密なステージであった。

続いては、YEN TOWN BANDとの共演も感慨深いLily Chou-Chouである。つまり、岩井俊二×小林武史のタッグによる、映画と音楽が深く結びついたプロジェクト（前者は『スワロウテイル』、後者は『リリイ・シュシュのすべて』）という共通点を持っているからだが、小林武史（Key）を含むハーフエレクトロニックのバンド編成で、名越由貴夫（Ｇ）によるボウイング奏法のギターがなびくオープニングだ。そしてSalyu（Vo）が椅子に腰掛け、“アラベスク”を歌い出す。トラッド風の深い情感と、先鋭性を同時に鷲掴みにしている点が素晴らしい。Lily Chou-Chouとしてデビューし活躍した後、Salyuは確固たる独自のソロキャリアを築き上げてきたが、Lily Chou-Chouとしてのキャラクターを大切に呼び起こそうとするスタンスが窺える。ミステリアスな存在のままくっきりと唯一無二の感情表現を残してゆく、あの手応えだ。ゆっくりと上体を揺らしながら歌にヴィブラートを加えてゆく“エーテル”、そして現代型の賛美歌のように響く“回復する傷”を歌い上げると、最後に“グライド”を披露して、Salyuは静かに去っていった。

さあ、小林武史、名越由貴夫、吉木諒祐(Dr)に、村田シゲ(B)と加藤哉子(Cho)も加わって、YEN TOWN BANDのイントロが始まる。そこに華やかなドレスを纏い、ソウルフルなウィスパリングヴォーカルで“Sunday Park”を歌い出すのはもちろんグリコ a.k.a. Chara(Vo)だ。オーディエンスの大喝采を浴び、「元気ぃ～？ YEN TOWN BANDです」とキュートな声で挨拶を投げかけると、小林武史もギターを握る編成で愛くるしい“Mama’s alright”へと向かう。それにしても、今年9月の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」で12年ぶりのライヴを行い、しかも復活後の新たなバンドラインナップだというのに、タイトで歌の呼吸に寄り添うアンサンブルが素晴らしい。

“上海ベイベ”でオーディエンスと見事な掛け合いを繰り広げるCharaは、ドレスの裾をたくし上げて軽やかにステップを踏みながら歌う。このチャーミングなカリスマ性はまさしく物語の中のグリコだが、20年近くその魅力をひとつの価値として守り続けてきたCharaの姿勢にも胸を打たれる。「こんな、グッズとかできることになったの、私たち（笑）。現実の世界に出てきちゃったわ」「久しぶりにライヴハウスに来たって人もいるんじゃない？ 大事にしていきましょ、私たちのこのカンケイ」。Charaはそんなふうに語って、“小さな手のひら”やYEN TOWN BAND版の包容力に満ちた“My way”を歌ってゆく。

Charaがタケシコールを誘って、照れ臭そうにおずおずと語り出すのは小林武史。YEN TOWN BAND再始動に向けて新曲を製作していた時期の頃を振り返りながら、まだ仮タイトルの新曲を紹介する。ドリーミーなキーボードサウンドやギターの玄妙なスライドが織りなす楽曲で、「立ち向かわない勇気」を促すような、優しいメッセージソングであった。そして“She don’t care”から“してよ してよ”にかけては、大らかにしてグラマラスなYEN TOWN BANDのロックンロールが熱を高めてゆく。唯一のアルバム『MONTAGE』全曲＋αの本編を締め括るのは、Charaの歌い出しとブレスを大切にしながら披露される、イントロなしの“Swallowtail Butterfly ～あいのうた～”だ。なんて普遍的な楽曲なのだろう。その生命力の躍動に、ただ身を任せれば良いだけだ。

アンコールの催促に応えて再登場すると、Charaは、12/2リリースのシングル『アイノネ』について改めて語りながらガッツポーズを決め、『MONTAGE』リマスター盤（『スワロウテイル』同梱ヴァージョンも）やアナログ盤リリースについても告知。そして、「やってみますか」と“アイノネ”に向かう。奥ゆかしい、抑制の利いたエレクトロニックロックグルーヴに、推進力とメッセージがじわりと滲むような、これこそ2015年のYEN TOWN BANDという素晴らしい楽曲だ。90年代中盤に、物語の中からオルタナティヴという価値観を伝えたバンドは、その後の20年も価値観を大切に守り抜き、優れた音楽と共に次の世代へと手渡そうとしている。そうでなければ、決して成立しないはずのライヴであった。（小池宏和）

〈セットリスト〉

・amazarashi
01. 後期衝動
02. 季節は次々死んでいく
03. 空っぽの空に潰される
04. 名前
05. カルマ

・Lily Chou-Chou
01. アラベスク
02. My Memory
03. エーテル
04. 回復する傷
05. グライド

・YEN TOWN BAND
01. Sunday Park
02. Mama’s alright
03. 上海ベイベ
04. 小さな手のひら
05. My way
06. 新曲
07. She don’t care
08. してよ してよ
09. Swallowtail Butterfly ～あいのうた～

（アンコール）
10. アイノネ

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