総力戦のようなアルバム

キリング・ジョーク『宣戦布告』
2010年10月20日発売
ALBUM
キリング・ジョーク 宣戦布告
2007年に2代目ベーシストのポール・レイヴンが急逝したことがきっかけとなってオリジナル・ラインナップで復活、翌08年には来日公演も行なったキリング・ジョークが、いよいよ新作を完成させた。

2003年リリースのアルバムではドラマーにデイヴ・グロールを迎え、90年代以降のオルタナティヴ系ヘヴィ・ロックに与えた影響を自らにフィードバックしたようなサウンドで復活を示したが、今作ではヘヴィな路線だけでなく、もっと初期の感触も伝わってくる。また、シングルの“ヨーロピアン・スーパー・ステイト”にはテクノっぽいアレンジが施されているし、さらに“ザ・レイヴン・キング”はタイトルから察してポールへ捧げたナンバーで、ここでは中期に展開していた叙情的な面も登場。つまり、バンドのサウンド変遷を集大成したような内容だと言えるだろう。そして最終トラックでは、オリジナル・ロンドン・パンクの拠点であったラドブローク・グローブをテーマに、ジョー・ストラマーをはじめとする夭折したパンク・ロッカーへの想いが綴られる。キリング・ジョークの全てが詰め込まれたかのような力作だ。(鈴木喜之)
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