暑い残暑をさらに暑くする逆療法盤

サージ・タンキアン『インパーフェクト・ハーモニーズ』
2010年09月22日発売
ALBUM
システム・オブ・ア・ダウンのボーカリストの3年ぶりのソロ第2弾。前作はギターとピアノのみをバックにオペラ・テイストの作品を目指したものの、いつのまにかヘヴィなロック・アルバムになってしまったというもので、結果的にはシステムとそれほど大きくは変わらない内容だった。それに比べると本作はソロとしてしっかりとコンセプトを立てて制作に臨んだことがわかる。前作の曲をオーケストラで演奏したアルバムを今年春に発表しているが、本作はその成果を下敷きにしている。エレクトロニックなベーシック・トラックに大規模なオーケストラが導入され、やたら大仰でけれん味たっぷりのシンフォニック・ロックを展開。システムのヘヴィ・ロック風味は後退しているものの、もともと大風呂敷でエキセントリックで、良くも悪くも自然体とはほど遠い肩の力の入りまくった過剰な情熱がこの人の持ち味だから、こういう方向性もまったく違和感がない。シンフォニックといってもクラシカルというよりこの人らしいアラビックなニュアンスが濃厚で、最尖鋭のロックであると同時に、最新のワールド・ミュージックとしても聴ける。(小野島大)