有終の美

ギャング・オブ・フォー『アンチ・ヒーロー』
発売中
EP
ギャング・オブ・フォー アンチ・ヒーロー

今年2月に亡くなったアンディ・ギルは、亡くなる直前までギャング・オブ・フォーの新作に取り組んでいたが、残されたメンバーがそれを完成させたのがEP『This Heaven Gives Me Migraine』だった。そして今作は、生前のアンディとメンバーが共作した新曲“Forever Starts Now”、アンディが亡くなる前に完成していた“Change the Locks”(『ハッピー・ナウ』2019収録)と“Glass”(『エンターテイメント』1979収録)のリメイク、そしてボーカリスト、ジョン・ジェイラーのソロで、アンディに捧げたトリビュート曲“Day Turns Into Night”の4曲を収録している。

“Forever Starts Now”は、確かにアンディの意思が入っていると思わせるエレクトロ・ファンクで、少ない音数からだんだん楽器の数が増えていく構成もいい。メロディもエモーショナル。“Change the Locks”はテクノ色濃いオリジナルのアレンジとは打ってかわってロック・バンド色濃い仕上がり。オリジナルよりギターのエッジが立っていて、全体の仕上がりもドラマティックだ。これが本作のベスト。“Glass”は比較的オリジナルに忠実だが、ローが強調された録音でベースの存在感が増し、全体に厚みのある音になっている。残る“Day Turns Into Night”は打ち込みによるR&B色濃いエレクトロ・ポップで、ギターの存在感は薄くロック色も希薄。これはコロナの影響で集まってのバンド・レコーディングができなかったこともあるだろう。《出逢えて良かった/礼を言うには遅すぎるだろうか》という歌詞は感動的だ。

唯一のオリジナル・メンバーにして音楽的精神的支柱だったアンディを失った彼らが今後どうなるのか、公式な声明はまだない。だがバンドとしての生命は尽きたと見るべきだろう。歴史は終わったのだ。 (小野島大)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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ギャング・オブ・フォー アンチ・ヒーロー - 『rockin'on』2020年9月号『rockin'on』2020年9月号
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