世界を見つめる、神と神

ナズ『ナシール』
発売中
ALBUM
ナズ ナシール

『イルマティック』20周年が盛り上がったからだろうが、オリジナル・アルバムとしては実に6年ぶりで、ナズ史上最長のブランクとなった。カニエ・ウェストが一連のセッションでプロデュースしたプシャ・T『デイトナ』、カニエ自身の『イェ』、キッズ・シー・ゴースツのデビューALに続いてリリースされた、7曲収録というボリュームの作品である。ナズの、アメリカ黒人が直面する現実や歴史的背景をラップしてゆくスタイル。それとカニエの、パラノイアと甘い陶酔感が綯い交ぜになった歌心がミックスされる印象だが、これが不思議なほどうまく纏まっていて驚かされる。ナズのキャラクターに引き寄せられる形で、今のカニエも堂々とキャッチーかつダイナミックなヒップホップ・ビートを構築することができたし、ナズもノリノリでレコーディングに臨むことができた、というところだろうか。

最も印象的なのは、“Bonjour”から“everything(feat. The-Dream & Kanye West)”へと至る流れだろう。古い映画音楽から抽出されたエレメントが楽曲の幻惑的なムードを増幅させ、とりわけ“everything〜”はザ・ドリームとカニエのコーラスこそが主題になっている。ナズの新作というよりもカニエとのコラボ作という趣を強めてしまうが、ポップな結実という点で認めざるを得ない説得力だ。最終トラック“Simple Things”は、《ビートのためにレコードを売ったことはない。みんなは俺のヴァースを買ってくれるのさ/生み出さなきゃ価値はないが、俺には上っ面以上のものがあるんだぜ》というナズのラップに感涙。トラック制作に参加したカシミア・キャットとベニー・ブランコのコンビ、またコーラス参加したカニエの従兄弟=トニー・ウィリアムズも充実の仕事ぶりを見せている。(小池宏和)



『ナシール』の詳細はUNIVERSAL MUSIC JAPANの公式サイトよりご確認下さい。

ナズ『ナシール』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」9月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


ナズ ナシール - 『rockin'on』2018年9月号『rockin'on』2018年9月号
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