フリークスの逆襲

アリエル・ピンク『デディケイテッド・トゥ・ボビー・ジェームソン』
発売中
アリエル・ピンク デディケイテッド・トゥ・ボビー・ジェームソン
ワイズ・ブラッド、デイム・ファンク(本作にも共演曲のリワークを収録)らとの霊感豊かなコラボが続いてきたところで、3年ぶりの新作。ルーツ=宅録に回帰した1枚とのことで、『ザ・ドルドラムズ』のジャケに軽く目配せしたようなアートワークも納得だが、聴き手を翻弄する(それが魅力でもある)あのラジオの周波数を次々変えながらジャンルをホップするかのようなエキセントリックな暴走はやや抑えめで、奇妙なデジャヴとノスタルジーとを醸し出す独特な音作りも繊細かつ精確にジャッジされている。アーティストとしての美意識や精神性は揺らいでいないものの、10年代以降の彼の曲にフォーカスを絞る術=悟りが更に深まったのを感じさせる良い作品だ。タイトルに登場するボビー・ジェームソンやメランコリックな⑦(AP節炸裂!)のPVでのチャリーノ・サンチェスへのオマージュも含め、カルトなアウトサイダー・アーティスト=同志への共感を改めて表明する1枚でもあるだろう。レーベルも移籍したところで、LA地下フリーク連盟の看板として彼がこれからも不思議なDIYポップの一角を支えていってくれることを切に願う。 (坂本麻里子)
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